【マレーシアで大規模デモ】首相汚職疑惑とその背景にある社会問題

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マレーシアのクアラルンプールでナジブ首相の汚職疑惑がきっかけで、2日間の大規模デモが行われました。日本でもニュースで取り上げられていたので、ご存じの方もいらっしゃると思います。
デモの目的には、首相の退陣を求めるものでしたが、その背景にはマレーシアが抱える社会問題への国民の怒りが現れていたようです。
そんなマレーシアの抱える社会問題に注目したいと思います。

事実上の一党支配

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画像出典:https://pixabay.com/ja/

マレーシアは多民族国家である事は有名ですが、多数派であるマレー系・華人系・インド系から構成されています。イスラム教徒のマレー人を支持母体とする統一マレー国民組織を中心とした与党連合の国民戦線が長い間政権を握っています。
天然資源に頼る経済から、工業化を進め、現在では東南アジア第3位の経済規模を持つまでに成長しました。

1980年代、当時のマハティール首相の元、「ルックイースト」政策(日本に学べというもの)で多くの日本企業が進出したことから現在も日本との経済関係は強いのです。
マレーシアは、2006年から8年連続「ロングステイ希望滞在国」世界第1位と移住先、老後を海外で過ごしたいという日本人にとても人気を得ている国です。

大規模デモは新しいマレーシアの為

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画像出典:https://www.straitstimes.com/asia/se-asia/bersih-rally-organisers-promise-not-to-enter-historic-merdeka-square

このデモのきっかけとなったナジブ首相の汚職疑惑。
「国営投資会社1MDBとのつながりのある団体から、ナジブ首相の口座に7億ドル(840億円)が渡った。」という疑惑。
首相はこれに対して、「資金は中東の寄付者からのもので、党やコミュニティのために必要なお金だった。私的目的で受け取ったのではない。」と説明しました。

今回のデモ、8月31日の独立記念日を前にした30日、クリーンで公平な選挙を求めるグループ「Bersih(ベルシ)」が組織されて、黄色いシャツを着た25,000人のデモ参加者(警察当局による推計)が独立広場近くに集結しました。

かつてはナジブ首相を支持していたマハティール氏はデモ参加に先立ち、メディアに対し「彼(首相)を退陣させるため、民衆の力を示さなければならない。国民全体はこうした腐敗指導者を望んでいない」と述べた。
[クアラルンプール 30日 ロイター]

NGOの連合体「ブルシ」の主催で、この日が最終日。数万人が集まったとみられる。警察は「治安を脅かすデモは違法で、逮捕も辞さない」と警告してきたが、警官隊との大きな衝突は起きていない。
出典:https://www.asahi.com/articles/ASH8Z4TKXH8ZUHBI00D.html

過去のデモでは催涙ガス、高圧放水泡で警察が鎮圧するなどの場面もありましたが、今回は平和的に行われていたようです。

参加者の1人のコメント
デモが一夜にして変化をもたらすとは思わないとし、「新しいマレーシアを作る為の努力の一部。」と述べたようです。(AP)

人種間の不公平・言論の自由

今回のデモの背景には、国民の不満が積りに積っていたと言えます。
ナジブ首相は当選以来、「長らく続いているマレー人優遇政策の緩和、経済を透明で功績に基づくものにする」と約束したとBBCは述べています。
しかし、多くの人種的少数派は、現在のマレーシアが能力主義社会には程遠く、国立大学の進学にも人種的な壁があることを批判。
首相は党の古参の政治家を説得することは出来ず、人種間の不公平を拭うことは出来なかったようです。

また、首相はソーシャルメディアも積極的に活用していて、中国語のFacebookアカウントを通し、華人有権者との交流にも力を入れていたと言われています。
しかし汚職疑惑が出た後、
・政府は1MDB事件を報じるサイトへのアクセスをブロック(BBC)
・デマ屋は攻撃すると宣言(BBC)
・「Bersih(ベルシ)」のWebサイトへのアクセス禁止(ロイター)
といった報道がされました。

ナジブ首相による政府系ファンド資金流用疑惑が原因で政情不安が続いているマレーシアでは、ナジブ首相の退陣を求める市民団体が大規模デモを行うなど、混 乱が続いている。そんな中、マレーシア通信・マルチメディア委員会(MCMC)は27日、デモ関連の情報を提供するウェブサイトを遮断すると発表した(BIG NEWS NETWORK、HKFP、マレーシアニュース、Slashdot)。

マレーシアには、政府を侮辱・意義を唱えたりする者を罰する法律が存在します。
この法律をナジブ氏は当初廃止すると約束していましたが、今ではそれも強化されようとしているとBBCは報じていて、言論の自由、報道の自由に厳しい制約があるという事を示唆しているようです。

政府はニュースサイトの運営に政府への事前登録を義務づけることも検討していた。また資金疑惑関連記事を載せた新聞の発行を禁じたこともあるという。Bersih側は、政府側の行為は表現の自由や集会の自由に対する権利の侵害であり、国際法違反だとして強く反発している。
出典:https://yro.srad.jp/story/15/09/02/0653243/

国民をさらに怒らせる増税・景気低迷

国民の怒りにさらに火を付けているのが、増税による負担の増加、そして経済低迷。
首相は、与党の反対を押し切り「食料品・燃料への補助」をカット、そして消費税を導入。
正しい判断であるという意見もありましたが、汚職疑惑が浮上してから国民に負担を強いるより無駄や汚職の摘発で歳入を増やすという選択もあったはずだろうと批判を受けます。

エネルギー価格の低迷により、ガス・石油の輸出歳入が減少していること、そして8月に自国通貨がドルに対し17年ぶりの安値を付けたことで、首相にますますプレッシャーがかかっている…とロイターで述べられていました。
海外各紙では、今回のデモ参会者の多くはマイノリティと都市部の少数のマレー人であったと報道されていて、APでは「マレー人の参加が少ないと政府が読んだためにデモが許されたのであろう。」という一部のアナリストの意見を報じました。
また政治アナリストのイブラヒム・スフィアン氏の意見は、「多くの農村部のマレー人が通貨安と景気低迷に不満を感じている。」と指摘。

デモに参加したマレー人男性は、「マレー人がデモに参加しないからと言って、ナジブに怒っていない訳ではな い。次の選挙まで待てば、分かるだろう」と語ったという(ブルームバーグ)。

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